昨年の夏、長崎県雲仙市の岩崎政利さんの野菜を取り寄せ注文した。
届いた箱を開けると、見たことがない形のカボチャやキュウリをはじめ、さまざまな野菜が詰まっていた。
野菜のひとつひとつの説明がついていたので、それぞれの野菜の名称や特徴だけでなく、岩崎さんが畑で野菜と向き合う様子、岩崎さんのもとにタネがやってきた経緯、野菜のタネがつながれてきた経緯などがよくわかって、野菜への愛着がわく。
その野菜にまつわるもろもろを知らないで食べるのと、知ったうえで食べるのとでは、おいしさがまったく違う。
食は、食材そのものを食べるだけでなく、その野菜をめぐる歴史や課程といったストーリーを丸ごと食べているんだなあと実感した。
特に「福島ミニかぼちゃ」は、福島県のおばあさんがタネとりを続けてきたけれど、福島第一原発の事故で、作付けができなくなってしまった。たまたま、以前に岩崎さんにタネを分けていたことで、かろうじてタネが繋がれたらしい。
ほどよい甘みでただでさえおいしいのに、「よくぞ生き残った!」という思いが、かぼちゃの味をさらにおいしくする。
福島ミニかぼちゃを食べた数日後、岩崎さんの畑へお邪魔した。
勝間かぼちゃ、すくなかぼちゃ、打木栗かぼちゃ、鶴首かぼちゃ…。さまざまなカボチャに出会った。見た目も多様だけど、甘かったり、ほっくりしていたり、みずっぽかったりと、味や食感もさまざま。
でも、どれがおいしいとは一概に言えないなと思ったのは、「そのかぼちゃを生かすも殺す調理法にかかっている」という話を聞いたから。
野菜は、野菜単独ではなく、食文化とともに、つながれてきたんだなあと改めて思う。
この日は、日本大学の学生たちがたねとり体験に訪れていた。
たねとりは初めてという学生のなかに、「おばあちゃんが人参のたねとりを続けている」という女の子がいた。
岩崎さんの畑でたねとり体験をしたことで「私の家の人参をおばあちゃんが守ってくれていたんだ」と、おばあちゃんを見直していた。
それぞれの家庭に「家族ダネ」があってもいいなと思う。
岩崎さんのかぼちゃは食べるたびにすべてタネをとって洗って乾燥させた。
来年、わたしの畑に蒔いてつなげていこうと思う。
長崎とは違う、関東の気候風土に定着して、どんなカボチャが育つだろう。
(柏木智帆)
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