沖縄県宮古諸島の村でひっそりと歌い継がれてきた、厳しい暮らしや神への信仰などから生まれた「古謡(アーグ)」と「神歌(かみうた)」。
絶滅の危機に瀕している、こうした唄を歌い継ぐ人たちの暮らしを追うドキュメンタリーだ。
神事と唄が特別なものではなく、村の人たちの生活に溶け込んでいるのが印象的だった。
わたしたちの暮らしは、いま、労働や衣、食、住、自然などが、分断されている。
でも、宮古島の村の人たちは、生きることのすべてが丸ごと一体となって暮らしていた。地域に根付くってこういうことなんだなあと思う。
地域で連綿と受け継がれてきた唄の、世代を越えた共有。
伝統野菜やタネにも通じるものを感じた。
映画のなかで、高齢で病床に伏す村人の嵩原清さんに、嵩原さんが若かりし頃に歌った「池間口説」という唄を録音したものを聴かせるシーンがあった。
張りとつやのある当時の歌声と、現在の老い衰えた身体の対比が切ない。
世代を越えた感性の共有には、壮大な歴史が詰まっている。そのなかには、おそらく100年にも満たない短い年月で一生を終える自分も組み込まれている。
こうした唄と同様に、地域で細々とお年寄りたちがかろうじてつなぎ、今にも消えてしまいそうな野菜が各地にある。
野菜のおいしさはもちろん、野菜に詰まった歴史や文化をなくしたくない。
これからメシノタネとして何ができるだろうかと改めて考えた。
昔からたくさんの人たちが食べ繋いできた野菜を、繋いできたい。
正義感や義務感、使命感からではなく、当たり前に生活に溶け込んだものとして。
(柏木智帆)
0 件のコメント:
コメントを投稿