2013年3月8日金曜日

唇に唄を 食卓に野菜を

映画「スケッチ・オブ・ミャーク」を見た。

沖縄県宮古諸島の村でひっそりと歌い継がれてきた、厳しい暮らしや神への信仰などから生まれた「古謡(アーグ)」と「神歌(かみうた)」。
絶滅の危機に瀕している、こうした唄を歌い継ぐ人たちの暮らしを追うドキュメンタリーだ。

神事と唄が特別なものではなく、村の人たちの生活に溶け込んでいるのが印象的だった。

わたしたちの暮らしは、いま、労働や衣、食、住、自然などが、分断されている。

でも、宮古島の村の人たちは、生きることのすべてが丸ごと一体となって暮らしていた。地域に根付くってこういうことなんだなあと思う。

地域で連綿と受け継がれてきた唄の、世代を越えた共有。

伝統野菜やタネにも通じるものを感じた。




映画のなかで、高齢で病床に伏す村人の嵩原清さんに、嵩原さんが若かりし頃に歌った「池間口説」という唄を録音したものを聴かせるシーンがあった。
張りとつやのある当時の歌声と、現在の老い衰えた身体の対比が切ない。

世代を越えた感性の共有には、壮大な歴史が詰まっている。そのなかには、おそらく100年にも満たない短い年月で一生を終える自分も組み込まれている。



こうした唄と同様に、地域で細々とお年寄りたちがかろうじてつなぎ、今にも消えてしまいそうな野菜が各地にある。

野菜のおいしさはもちろん、野菜に詰まった歴史や文化をなくしたくない。

これからメシノタネとして何ができるだろうかと改めて考えた。

昔からたくさんの人たちが食べ繋いできた野菜を、繋いできたい。

正義感や義務感、使命感からではなく、当たり前に生活に溶け込んだものとして。



(柏木智帆)

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