2013年3月8日金曜日

里芋をつなぎ続けた66年

神奈川県の三浦半島の先端にある城ヶ島で、91歳の女性に出会った。

現役で自給用の畑をやっているお年寄りたちの中でも最高齢の石橋トキさん。

朝、トキさんが山の畑に行くときに着いていった。
家を出て山道の入口へ。急坂を登る前、ほんの1分ほどだけ石塀に腰掛けて休むと、「よっこらしょ」と言って立ち上がり、杖をつきながらゆっくりと登り始めた。足元が悪い場所もあったが、地下足袋にもんぺ姿でカゴを背負い、一気に登りきった。

急な坂道をしっかりとした足取りで登るトキさん。

25歳で嫁いできてから畑で野菜を作り続けてきた。
野菜のタネは基本的にはタネとりして繋いできたが、うまくできなかった翌年は、買ってきたタネを蒔いた。
だが、そのなかで一度も絶やさずに繋いできたというのが里芋。66年間、ずっと。嫁いだときにはすでに嫁ぎ先の娘さんが繋いでいたらしいので、少なくとも70年近く、あるいはそれ以上、脈々と受け継がれてきたのだろう。
県農業技術センター三浦半島地区事務所によると、里芋のタネイモの自家どりは一般的。だから、そんなに珍しいことではない。それでも「70年はすごい」とのこと。本当にすごい。


里芋は白芽。今年は育ちが悪かったらしい。

トキさんから、この里芋をいくつかいただいた。うまくつくれたら増やしてトキさんにお返しして、翌年以降も繋いでいきたい。

それにしても、トキさん、肌がつやつや。ほぼ毎日、山の上の畑へ通っているらしい。
高齢のトキさんを心配する息子さんからは、そろそろ畑をやめるように言われているらしいが、「やめたら畑がもったいないでしょう」とトキさん。畑はトキさんの生き甲斐になっている。日常の中に仕事を持つことが、生涯現役につながる。91歳になっても自分の食べるものを自分でまかなうという姿勢がかっこいい。

(柏木智帆)

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