横須賀市の「Yavas農園」では、種苗会社が人工交配したタネではない〝本来のタネ〟だけを無農薬・無化学肥料で栽培している。
そのタネは「固定種」や「在来種」と呼ばれている。野菜を栽培してタネをとり、そのタネを翌年にまいて栽培すると同質の系統が引き継がれる、いわば命がつながれていく品種だ。
1反5畝超の谷戸畑で、ことしの春のタネまきから始めたばかりだ。
表が緑色、裏が赤色の「裏紅シソ」。 「片面だけに衣をつけて揚げると2色の天ぷらになる」と鈴木さん。 |
9月からは地元の酒店で販売し始めたが、8月まで、とれた夏野菜は一切販売していなかった。
「とにかく自分でずっと食べまくっていた。どの品種がおいしいか、どう食べたらおいしいかを追求して、トコトン食べた」
鈴木さんは、計5年ほど飲食店で調理の仕事をしてきたという経歴もあり、赤字覚悟でいろいろな調理法を試してきた。
たとえばオクラ。
「丸オクラとバーガンディー(赤オクラ)は洗ってキンキンに冷やして生のまま。丸オクラは麹味噌、バーガンディーは麹味噌とマヨネーズを混ぜたものにつけて食べるとおいしい」
「スターオブデイビット(太くて角が多いオクラ)は焼くと味を吸収するので、肉と炒めたり、エビと炒めたりすると旨みを吸収する。一緒に炒める材料によって変化が楽しめる」
ちなみに鈴木さんは、オクラをゴマ油で焼いて塩胡椒で味付けするのが好きらしい。
「スターオブデイビット」というオクラ。 タネとり用に収穫しないでおいたものは全長20センチほどに成長。 |
鈴木さんが生産した野菜の食べ方について、鈴木さん以上に詳しい人はいない。
「いつか自分がつくった野菜を自分が調理する飲食店を開きたい」という。
説明を聞いていると、つくってみよう、買ってみようという気持ちになるし、自ら生産した野菜への鈴木さんの愛着を感じる。
それは「鈴木さんの野菜」への信頼感につながる。
有機JAS認証よりも、こうした〝顔認証〟のほうが信頼できるように思う。
10月からは東京・青山の国連大学前で土日曜日に開かれている「青山ファーマーズマーケット」に出店。
ブースに行けば、きっと鈴木さんが食べ方をレクチャーしてくれる。
(柏木智帆)
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