2013年3月8日金曜日

城ケ島野菜

9月18日付の「神奈川新聞」で「城ヶ島野菜」の記事を書いた。


三浦市・城ヶ島で、長年にわたってタネが受け継がれ、住民たちの食文化になじんでいる在来野菜が残っている。後継者不足でタネが途絶える心配もあったが、数人の若者たちがタネをつなぐプロジェクトを始める動きもある。島の特産にしようとの期待も高まる。


このタネは、正月に欠かせない菜っ葉の「正月菜」と、ひとさやに入る豆が少なく小ぶりな「ソラマメ」。

地元老人会長の村田吉雄さんによると、自給用の農産物を生産する城ヶ島のお年寄りのうち約10人が、この2種のタネを採って翌年以降にまく「自家採種」を続けているという。

中でも、星野サワさん(81)は、嫁ぎ咲きが代々つないできていた正月菜とソラマメのタネを絶やすことなく育てている。城ヶ島では、正月に正月菜を雑煮に入れて食べる家庭は今もある。星野さんは「正月菜のほかにいろいろな具材を入れるけど、昔は正月菜と餅で食べていたんだよ」と回想する。

豆が黒く変食しないよう10日以上は天日干しする。F1種という一代交配種のタネを毎年種苗会社で購入するのが一般的な農業だが、星野さんは「しゅうとさん(義母)の見よう見まね」でやってきたといい、自家採種を特別なことと思っていない。むしろ「買ったら(お金がかかり)大変」と話す。

小ぶりのソラマメは「味がいい」との定評がある。口調の加藤治彦さんも「昔から城ヶ島のソラマメは有名。口コミで注文販売も多い。畑をやっている家はみんな作っている」と太鼓判を押す。

だが、作っている人たちは高齢で後継者はいない。いずれタネが途絶える心配もあった中、タネに詰まった歴史、文化、生命的な価値を見いだした島外の若者らが畑を借りてタネをつなぐプロジェクトを始めようとしている。

城ヶ島観光協会長の青木良勝さんは「継承していくことで島の活性化につながる」と期待を寄せる。
「『城ヶ島野菜』として、少量・高品質・高価格でブランド化させたい」
                                    (神奈川新聞9月18日より)


自家採種したソラマメを見せる星野さん。
焼酎の空きボトルにたっぷりとマメを保管している。

この記事にある「若者」とは、もちろん「メシノタネ」。


城ヶ島では、自家採種したササゲを干す風景も見られる。〝タネとり文化〟がまだ息づいている。
先日ひらかれた地元の老人会では、お年寄りが育てたササゲでつくった赤飯をみなさんで食べたそうだ。

道ばたに干されたササゲ。
島ではこうした風景はよく見られるという。

水平線の向こうに大島を望む、素晴らしく見晴らしのいい場所の近くに、畑をお借りできた。

すでに数人のお年寄りからタネとりや野菜のことを教えてもらっている。
記事に書いた野菜以外にも、20年間お年寄りがタネをつないでいるという「草ねぎ」もある。

「城ヶ島野菜」に関する食文化や栽培・採種技術などを伝授していただき、脈々と受け継がれてきたタネが絶えてしまわないよう、城ヶ島の畑でしっかりとつないでゆきたい。


「城ヶ島を元気にしたい」という地元の人たち。「城ヶ島野菜」がその一助になればうれしい。




(柏木智帆)

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